昌美先生

二科会会友の中山昌美(よしみ)先生。私が大学生の頃からお世話になっている先生です。


私は美大にいたわけではないのですが(文学部の芸術学科です)、絵を描きたいという気持ちがどこかにあって、その場所を求めていました。あるとき近所に絵画教室を見つけ、そこで出会ったのが昌美先生でした。


最初は趣味以上のことは考えていなかったのですが、習い事感覚ではなくプロ意識を持って描くよう指導され、何の受賞歴もない素人なのに個展を勧められ、二科展への出品も後押しされ…というように、なんだか全部先生に導かれて今に至っています。先生がいなかったら絵を描く道は歩んでいなかったと思います。


また、若く世間知らずだった私は、絵画以上に先生から人生を教わりました。人間関係、恋愛関係、大事なことの選択など、何かあれば必ず先生に相談。親とはまた別の存在として、かなり依存していました。「絵里子ちゃんは時間泥棒だもの。ホーッホッホッホッ…」と笑いながら、先生はいつも親身になって長電話(平均2時間)に付き合ってくださいました。


先生はこちらが望む以上の具体的なアドバイスをくださるので、人生経験が少ない私は泣きながら聞き、素直に実践していました。先生はそのへんの占い師よりよほど説得力があるし、時間泥棒の私からお金を取ってもいいくらいだったと思います(笑)


でも、そんな私も年を取るにしたがって、先生の強烈な発言を時に疑わしく感じたり、半分に聞いておいたほうがよいのではないかと思うようになりました。でもそこにこそ、長い時間をかけた(かれこれ30年!)先生の教えがあると思うのです。話の中でそういった意図を感じました。「陰と陽を見極める力」「清濁併せ呑む力」といったものです。もちろんまだまだ未熟ですが、未熟なりに肝が据わって大概の事は怖くなくなったし、何でもありだと思って生きているのは先生に鍛えられたおかげだと思います。


余談ですが、お洒落な昌美先生からこれまで伝授されたものには、服・靴・バッグ・アクセサリーなどのお下がりもたくさんあり、もう感謝しかないです。先生には足を向けて寝られません。